Kozma Orsi Quartet -- "Hide And Seek"


 音楽の世界で、'カテゴリー' や 'ジャンル' という言葉は、ときに虚しく響く。例えばこのアルバム・・・体裁としては「女性ジャズヴォーカル」そのものではある。しかも、ボーカリストの名前をそのままグループ名にしているのだから(その事自体珍しいよね・・・)、誰がみても'ボーカルもの'には違いない。

しかしこのアルバムをステロタイプ化したジャズ・ヴァーカル・アルバムとして聴いてしまうと、おそらく本質を見失うことになるだろう。要はそういう陳腐な視点から、歌がうまいだの下手だのとアウト・フォーカスな評論をして欲しくないわけね。どうしてもジャンルの枠をはめないと気が済まない人には、East-Euro Jazzの一つの新しいかたちだとでも理解しておいていただきたい。

ヨーロピアン・ジャズについて詳しいわけではないけれど、彼の地(特に北欧や東欧)のジャズはポップなものとの間に線を引こうとは思っていないように見える。これにはいろんな背景があると思うけれど、少なくともジャズをブラック・オリエンティッドな世界に閉じ込めようとはしていないようなのだ。

そういう意味でも、とりあえず一発目、次のビデオクリップを見ておこう・・・
  http://www.youtube.com/watch?v=D9LpX0L2PNI
このワイルドぉ〜!なおネエちゃんが、下に紹介するしっとりとしたジャズアルバムを作っちゃったわけで・・・。その断層のズレみたいなところが何とも小気味良い。ボク達が慣れ親しんできたジャズの楽曲とはちょっと味わいの違うものが混在しているけれど、ポップ・ジャズ(あるいはジャズ・ポップ)とは全く違う・・・全体としてしっかりとジャズっているのだ。
ちなみにご紹介のCDジャケットのデザインもまた、独特の風味を漂わせているよね。東欧のゴシック・ロリータなのかも・・・(筆者はこういうのも好みだけれど・・・笑)。

さて、Kozma Orsi ・・・初めて名前を聞かれる方に紹介すると、ハンガリー共和国で活躍する若手(おそらく20代?)のミュージシャンだ。大衆受けするようなポップなものから、ちょっとパンクで前衛的なもの、そして大陸的なロマンチシズムをそこはかとなく漂わせるバラードまでを、卓越した歌唱力でワイドレンジににカバーしてしまう。

声質は透明感のある'可愛い声なのだが、それをウリにして安住することを良しとしないダイナミクスが秘められている。

その彼女が2008年に結成したのが標題の Kozma Orsi Quartet だ。
  Kozma Orsi (Vo) 
  Cseke Gabor (pf)
  Hars Viktor (b)
  Mohay Andras (ds)
詳しくは、日本でのCDリリース元 Whereabouts Records さんのサイトを参照してほしい。10曲中7曲まで試聴することもできる。

  http://whereabouts-records.com/kozmaorsiquartet_artist_info.htm

Kozma Orsi Quartet の1st ジャズアルバム "Hide And Seek" は現地では2008年のリリースだが、日本ではまだ出たてのホヤホヤ!この記事を書いているわずか2日前だね。

現地では今月21日にもう二枚目のアルバム ”Embrace" が発売になる。大人の女性への階段を一挙に駆けあがろうとしている彼女のイメージを演出しているかのようにも見える。音源を早く聴いてみたいものだ。
さて、今回お勧めの "Hide And Seek" だがどの曲もよく出来ていて、最初の一音から最終トラックの余韻に至るまでハンガリアン・ジャズの洗練された音造りを堪能することができる。スタンダードナンバーは#1 Save Your Love For Me と #6 Sleepin' Bee のみ、他は Cseke Gabor(pf)と Hars Viktor(ds) のオリジナル曲でかためられている。ジャズのデビューアルバムとしては立派なチャレンジと言わなくてはならない。
ゲストもまた多彩・・・#5 Unreachable では日本でもいち早く人気を獲得した Harcsa Veronika と、そして#9 You'll Find My Soul ではお馴染 Szaloki Agi と見事なハーモニーを紡ぎ出している。#8 Two Chances でフィーチャーされている Olah Szabolcs のギター・ワークも光っている。

個人的にはスイング感のある #2 Magic Dust や、グルーブ燃え立つ #4 Our French Connection、#7 Bitter Lime、前掲#8 などが好みだけれど、やはりアルバムタイトルチューンの #10 のHide and Seek が印象的・・・いつまでも耳に纏わりつく格別の一曲だ。

http://kozmaorsi.hu/
myspace



(筆:しろくま)


  • 2010.10.07 Thursday
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